トラブルなど問題対応に強くなる秘訣は何か?
ある30歳ぐらいの中堅SEから次のような質問を受けた。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20090325/327177/
「仕事をしていると,バグでシステムが動かなくなったり,マシンが壊れたり,顧客からクレームをもらったり,急に仕様を変えてほしいと要請されたり,パートナのSEが急に転職したり,などいろんな問題にぶつかります。そんなとき対応の仕方に悩みます。下手な対応すれば上司から文句も言われます。どうすればうまく対応できるようになるでしょうか」。
確かに,SEをやっているといろんな問題にぶつかる。筆者も現役時代,いろんな問題にぶつかり,七転八倒したこともある。修羅場も経験した。SEマネジャ時代は,部下がいかにすればそれに強くなるようになるかと悩んだ。そんな長年の経験から言うと筆者は,まず質問者の方に「よほど簡単な問題でない限り,こう対応すればよいという正解はまずありません。ほとんどの場合はケースバイケースですよ」と言いたい。
事実,起きた問題に対してどう対応するかそれを考える際に考慮すべき事項は実に多い。例えば,その問題にかかわる諸々の物事の状況やその問題に起因する様々な影響とその度合い,また手が打てる現実的可能性などいろんなことを考えてどう対応するかを決めなければならない。
具体的には,仮にバグにぶつかったとすると,その対応を考えるときにはトラブルの状況やその難易度,再現性の有無,同様のトラブルの有無,業務への影響の度合い,顧客との関係の良さ悪さ,ビジネスへの影響,SEの技術力や勤務時間,助っ人SEの可能性,開発部門との関係など諸々の事柄を考えた上で,どう対応するか判断しなければならない。顧客からクレームをもらったときやパートナともめたときなども同様にいろんなことを考えて判断しなければならない。
では,どうすればSEがその対応の仕方に強くなれるか。それについて王道はないと思う。そこで,筆者がSEマネジャ時代に部下に対して指導していたやり方が参考になれば思いここで紹介したい。
そのやり方は,まず,(1)問題が起こったときにSE自身が「これはどう対応すれば良いか」を考える。そして(2)SE自身が「自分はこの対応はこうする/こうしたい」と決める。間違っていても良いからとにかく決める。次に(3)それをSEマネジャや先輩に「自分はこの問題にこう対処したいと思います,これでよいでしょうか」と相談する。その結果,(4)そのやり方は正しいと言われたら「自分の考えは合っていた!良かった」と自信をもってそれを行なう。(5)違っていれば「なぜそうなのか,自分の考えのどこがおかしいのか」と質問しSEマネジャや先輩の意見を聞く。そして(6)「なるほど,そうなんだ」と納得できたら,SEマネジャや先輩の意見を取り入れてそれを行なう。だが(7)納得がいかなければ業務命令でない限り自分が考えたやり方で行なう。こんなやり方である。
当時,筆者は部下のSEにこの(1)~(7)を実践するよう指導していた。読者の中には「なぜ?」と思う人もいると思う。これにはそれなりの理由があった。ポイントは二つだ。
一つ目のポイントは「SE自身が対応の仕方を決める」という点である。それは問題が起きたとき,その問題の状況,顧客やプロジェクトの状況,その問題が与える業務などへの影響度などを一番よく知っている人間こそが適切な対応策を考えられるが,それを一番よく知っているのはSEだからだ。そこで当時筆者は,部下のSEに「皆さんしか正しい対応の仕方は決められない。問題にぶつかったときは自分でどう対応するか考えて決めろ。相談には乗る」と話し,彼らに任せるようにしていた。そのために前述の(1)(2)のやり方を指導した。
二つ目のポイントは「SEに対応の仕方の考え方を身に付けさせる」という点である。SEが問題対応に強くなるには「こんな状況はこう考えてこう対応するんだ」と言う考え方を身に付けることが重要である。例えば,要件が大きくなりそうなときに,顧客と交渉するにしても顧客の業務にどれくらいの影響があるか,ビジネスにどんな影響があるか,顧客との関係への影響はどうか,稼働開始に間に合うか,技術的実現可能性はどうか,自分たちの技術力はどうか,応援を頼めるか,コストは大丈夫か,契約内容はどうか,などいろんなことを優先度も含めて考え,どう対応するかを決めなければならない。筆者は,問題が起ったときに「それをどう考えればよいか」をSEに身に付けさせたいと思って,前述の(1)~(7)のやり方をさせていた。
第一線のSEがこの(1)~(7)のやり方をして「何をどう考えてどう対応するんだ」という“考え方“をSEが身に付けると,次に同様な問題が起ったときには適切に対応できる。また,いろんなケースの考え方””を身に付ければ,応用も利きだすし,ほかのSEの事例を聞いてもそれが頭に入る。すると,だんだんと問題対応に強くなる。
だが,SEが自分自身で考えず,SEマネジャや先輩に相談して指示を仰いでばかりいては,その考え方はなかなか身に付かない。まして,SEマネジャや先輩の指示通りにしてうまくいかなかったときには,彼ら/彼女らの責任にする。しかし,自分が考えたことや自分が納得したことであれば,成功しようが失敗しようがそれが自ずと身に付く。SEの方はこの点は特に注意した方がよい。
決断力も養成できる
筆者はこんなやり方をしたのには,当時問題が起きるとすぐ「馬場さん,こんな問題が起こりました。どうすればよいでしょうか」と言うSEが結構いたからだ。きっと現在も,どこのIT企業でもSEが自分で考えずにSEマネジャに「どうすればよいでしょうか」と相談するSEと,相談されたら「それはこうするんだ」と言うSEマネジャがいると思う。だが,SEマネジャが1~2件の顧客やプロジェクトだけを担当しているならともかく,5~6件となると日々変わる顧客やプロジェクトの状況を毎日現場で仕事をしているSEよりよく知っているはずがない。するとSEマネジャといえども対応の仕方を間違える可能性が少なからずある。すると,顧客に迷惑をかけかねない。
きっとそんなSEマネジャは,部下に相談されたら「こうするんだよ」と困っているSEを助けるつもりでやるのだろうが,そのやり方はちょっと短絡的すぎる。それよりも緊急時はともかく日ごろは「君はどうしたいんだ。君の考えは?」と尋ね,SEが考えてなければ「少し考えて来い」と突き放した方が,部下にとって温かいのではなかろうか。その方がSE自身が考えるから,成功しても失敗してもそれが身に付き,だんだんと適切な対応もできるようになる。
読者の方の中にはお気付きの方もおらえれると思うが,筆者はこのやり方を通じて,SEの決断力の養成も狙った。SEは往々に決断をするのに弱い。SEの中には物事を自分で決めずに「どうしましょうか」とすぐ先輩やSEマネジャに相談するSEが少なくないが,それでは困る。SEが自分の意見を言うことは極めて重要なことである。例えば,会議などでは「自分はこう思う」と自分の意見やポジションを明確に言う,顧客から何か言われたときでも「それは上司に相談して返事します」などあいまいな返事をするのではなく,自分の意見をその場ではっきり言うことが重要である。
だが,それには日ごろSEが自分の意見を明確に言う訓練をしていないとなかなかできるものではない。そのためには,問題が起きたときこそがSEに「自分で考え自分で決断する」習慣をつけさせる絶好のチャンスである。SEは起った問題を何とかしなければならないという,逃げられない環境の中で上司から突き放されると自分で決断をせざるを得ないからだ。第一線のSEは仕事をしっかりするのにも,問題が起こったときにしっかり対応をするのにも,自分で考えて自分で決めて自分で行動するという心構えと姿勢が重要である。いかに技術力があっても,それに乏しいSEはプロとは言えまい。
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[2009/03/27]