開発者として配属されたはずが,毎日雑務ばかり。何の技術も付かないと思い転職を考えています。
Q:開発者として配属されたはずが,毎日雑務ばかり。何の技術も付かないと思い転職を考えています。これから転職に必要な能力を培うにはどのようにすればいいのでしょうか?
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081225/321990/
毎日,ただただ雑務が多く,開発者として配属されたはずが,プログラミングをやる時間はほとんどないという状態です。上司には,何度も「ちゃんとした開発に携わりたい」と言っているものの,教育をする体制もないため,外注のプログラマに開発のほとんどの仕事を任せてしまいます。
このまま,この会社にいても,何の技術も付かないと思い,転職も視野に入れているのですが,これから転職に必要な能力を培うにはどのようにすればいいのでしょうか。また,どのような会社を選べば,技術力を身に付けつつ,社会に還元することができるのでしょうか。大学院を卒業後,働き始めたので,年は取っていますが,社会人としては2年目です。
(SE/女性・26歳)
A:拙速に転職に走る前に,まずは自分の状況を冷静に分析せよ。
ちょっと待ってください。転職を考える前に,あなたの状況をもう一回整理してみましょう。ひょっとしたら大きなチャンスを逃そうとしているのかもしれないのです。
現在どのような会社にお勤めなのかがよく分からないのですが,一般にユーザー系および元請けSI会社では,「プロジェクト・マネジャー(PM)促成栽培」を行います。あなたはこの促成栽培コース(つまり,一種のエリートコース)に乗っている可能性がありますので,よく確かめてみましょう。
SE,PM,経営者を経験した私から言わせていただければ,大学院を出た優秀な女性で,しかも上司に食ってかかる意欲があり,さらに技術力で社会貢献したいと思うような方は,会社としても貴重な人材なのです。
実は私も大学院を出てIBMに入社し,最初の年に,ある銀行のプロジェクトに一時配属されていたことがあります。そこで最初に上司が命じたのは,男の私に「お茶汲み」でした。外資系では社内でのお茶汲みはありませんので,非常にびっくりし,多少憤りも覚えました。
しかし,お茶汲みや資料の整理などの雑用をこなしていくうちに,プロジェクトにかかわる人々や,そこで何が行われているかが少しずつ分かってきました。その後,プロジェクトの隙間の,小さな,しかし重要なOS回りのプログラム1本の開発をアセンブラでやらされたのです。初めての実戦開発で随分失敗して,先輩たちに迷惑もかけましたが,それで自信もつきました。
その後,その他の現場を経験して,いきなりある開発プロジェクトのリーダーを任されました。入社3年目のことです。若造の私にとって,最初のお茶汲みの経験が活きたのは言うまでもありません。お客様,自分の会社,そして外注の人々がどのようにプロジェクトにかかわっているのか,そして現場でどんなことが起こっているのかを知っていたからこそ,大任を任されたのだと思います。幸い,このプロジェクトが成功して社内で表彰されたことが,私がエリートコースに乗ったきっかけでした(それでも10年後に転職したのですが)。
会社があなたを将来のPM候補と考えているかどうかを確認せよ
限られた情報の中であなたのSWOT分析をしてみると,図1のようになるでしょう。
図1●あなたのSWOT分析
あなたには弱みもある反面,強みも機会もあることに気が付いてほしいのです。
ユーザー系や元請けSI会社が「PM促成栽培」を行う事情は以下の通りです。実際好むと好まざるとにかかわらずそうなっているのです。
・プログラミングは外注できる。
・プロジェクトの責任は自社にあるのでPMは外注に任せられない。
・しかし,自社内にもPM人材は枯渇している。
大手SI会社の下請け企業からは,「何でこんなプログラミングもしたことのない若手PMの下で働かなければならないのだ」といった不満は非常に多いのです。私のIBM時代の同期で,優秀なPMはたくさんいるのですが,実際プログラミングをした経験はほとんどないはずです。
大事なのは,PMはそれ自体が専門職であり,プログラミングの経験が少なくても現場を理解していれば可能だ,ということです。また,プロジェクトが細分化され,その数が増える現状では,PM人材は業界としても最も不足している人材であり,不況になってもその状況は変わらないのです。
つまり,あなたが最初にすべきことは,あなたに対して会社が「将来のプロジェクト・マネジャーとして期待しているかどうか」を,まず確認することです。もし,そうならば,あなたのすべきことは以下の手順になります。
最初の分岐点は,自分は将来PMとしてやっていくべきかどうかというキャリア計画を考えることです。PMとしてやっていくのであれば,
(1)まず雑務をこなしながらプロジェクトの全体像を把握する。
(2)社内あるいは社外で自分のロールモデル(あなたの目指すキャリアを実践している先輩,上司)を探し,いろいろと意見を聞く。
(3)外注も含めて現場の人々と親密にコミュニケーションをとり,その意見を聞く。
(4)そのコミュニケーションの中から,今の自分でもできそうなプログラミングやライブラリー管理などの隙間ネタを見つけてやらせてもらう。
(5)PM技法を研修や独学で学び,PMの資格取得を狙う。
今の強みや機会を積極的に利用する
会社があなたを将来のPM候補とも考えずに,ただ何となく雑務をさせているのでしたら,それは確かに転職を考えても結構です。ただし,これからIT業界も大不況に入ります。転職といっても非常に難しい状況なのはお分かりでしょう。
あなたの言う「転職に必要な能力」とは,あなたを雇う転職先によって異なるのですが,20歳代半ばを過ぎての転職でしたら,ある程度「即戦力」として期待されます。この不況期であればなおさらのことです。現場での実績のない独学の知識は,転職では大して重要視されません。
あなたの現在の強みは,
・プロジェクト全体を知り得る立場にいる。
・プロジェクト・マネジャーの身近にいる。
・何かやりたいという意欲がある。
の3点でしょうから,それを十分に活かすべきです。
従って,その場合のあなたのすべきことの手順は,
(1)まず会社を辞めずに転職活動を開始する。最初に自分は何をしたいのかをよく考える。
(2)社内や社外で転職した方々からいろいろと意見を聞く。
(3)ネタ探しのために,現在の職場で外注も含めて現場の人々と親密にコミュニケーションをとる。
(4)そのコミュニケーションの中から,今の自分でもできそうなプログラミングや,ライブラリー管理などの隙間ネタを見つけてやらせてもらう。
(5)独学で自分の好きな分野の勉強をする。
つまり,今の状況を積極的に利用して,転職に有利な能力を高めていくことが最も安全でかつ近道のはずです。これは自分自身の判断なのでよく考えてください。
似たような悩みを持って,拙速に転職に走って,転職先で「こんなはずではなかった」と言いながら,さらなる苦労をしている若手SEはたくさんいます。そのようにならないためにも,いろいろな方から意見を聞くのも大事です。その意味で,私の意見が参考になれば幸いです。
Q:地方のSE会社に務めていますが,会社が派遣に特化しているので社員のモチベーションが低下しノウハウもたまりません。会社を変革するにはどうすればいいでしょうか。
地方のSE会社に勤めています。どの企業も不況のあおりを受けて業績が悪化しており厳しい状況下であり,不況に限らず,地方の会社は,首都圏へ目を向けていく方向性であることも承知しています。
そんな中,会社としてSE/PGの派遣にのみ特化し,仕事がない者はある意味強制的に出向させるケースが多くなっています。何も仕事がないよりは,安価でも出向させ,何とか売上予算達成をしようとしています。
私としては,その反面,ある意味チャンスと捉えており,今こそ社内にて次のステップに進む準備期間とも思っていますし,派遣ではなく受託開発を通し,ノウハウ蓄積・新サービスの検討やキャリアステップの醸成に力を傾けることが必要なのではと思っています。
このような,出向で人はいなくなるが,社内には何の利益ももたらさない,変な循環でここ何年も経過している感があります。会社の売上/利益は最優先と認識していますが,その反面,社員のモチベーション低下,ノウハウなどの財産がたまらない---こういったものを解消できるような仕組み作りにアドバイスいただければと思います。
(プロジェクト・マネジャー/男性・36歳)
A:まず地道な現場改善に取り組み,足場を固めて次のステップに進め。
典型的な中小IT企業,それも地方企業に多い悩みですね。
図2は,私がまとめた,それらの企業の内部事情です。多分多くの点で,あなたの会社にも当てはまるでしょう。経営,技術,人材,営業のすべての分野で大きな問題が山積しており,これらを解決するのは至難の業です。
図2●中小IT企業の悩み
[画像のクリックで拡大表示]
しかし,ダメだダメだと百万遍唱えても何も変わらないわけですから,あなたの言うようにこれをチャンスと捉えて改革を進めるのは,とてもよいことです。
次の図は,私がこれらの会社をコンサルする際に最初に提示する改革の方向性のフレームです。
図3●改革の方向性のフレーム
[画像のクリックで拡大表示]
Q:地方のSE会社に務めていますが,会社が派遣に特化しているので社員のモチベーションが低下しノウハウもたまりません。会社を変革するにはどうすればいいでしょうか。
地方のSE会社に勤めています。どの企業も不況のあおりを受けて業績が悪化しており厳しい状況下であり,不況に限らず,地方の会社は,首都圏へ目を向けていく方向性であることも承知しています。
そんな中,会社としてSE/PGの派遣にのみ特化し,仕事がない者はある意味強制的に出向させるケースが多くなっています。何も仕事がないよりは,安価でも出向させ,何とか売上予算達成をしようとしています。
私としては,その反面,ある意味チャンスと捉えており,今こそ社内にて次のステップに進む準備期間とも思っていますし,派遣ではなく受託開発を通し,ノウハウ蓄積・新サービスの検討やキャリアステップの醸成に力を傾けることが必要なのではと思っています。
このような,出向で人はいなくなるが,社内には何の利益ももたらさない,変な循環でここ何年も経過している感があります。会社の売上/利益は最優先と認識していますが,その反面,社員のモチベーション低下,ノウハウなどの財産がたまらない---こういったものを解消できるような仕組み作りにアドバイスいただければと思います。
(プロジェクト・マネジャー/男性・36歳)
A:まず地道な現場改善に取り組み,足場を固めて次のステップに進め。
典型的な中小IT企業,それも地方企業に多い悩みですね。
図2は,私がまとめた,それらの企業の内部事情です。多分多くの点で,あなたの会社にも当てはまるでしょう。経営,技術,人材,営業のすべての分野で大きな問題が山積しており,これらを解決するのは至難の業です。
図2●中小IT企業の悩み
[画像のクリックで拡大表示]
しかし,ダメだダメだと百万遍唱えても何も変わらないわけですから,あなたの言うようにこれをチャンスと捉えて改革を進めるのは,とてもよいことです。
次の図は,私がこれらの会社をコンサルする際に最初に提示する改革の方向性のフレームです。
図3●改革の方向性のフレーム
[画像のクリックで拡大表示]