ソフトウェア開発者のジレンマ:セールスエンジニアになるのは現実逃避か?
今はソフトウェア開発者にとって厳しい時期だ。今後ますます厳しくなるだろう。最新の新聞の見出しによると、2008年は IT 関連職の失業が2003年以降で最悪の年になる可能性があるという。ならば転職にはもってこいのタイミングだと思うがどうだろう?
http://japan.internet.com/busnews/20081127/6.html
まあ、もしかしたら、だ。
ここで、非難を覚悟で話をさせていただこう。営業職への転職というのはどうだろうか? 今、筆者の耳には世界中の IT 関係者の笑い声が聞こえたかもしれない。
営業だって?
非常にはっきり言って、筆者の知る大半のエンジニアは営業職の人たちをほとんどよく言わない。どういうわけかソフトウェアが売れない、という苦情が営業からあると、ソフトウェア自体は黙っていても売れるのだから営業が無能なのだと開発チームは非難の声を上げる。技術者の観点からは、営業担当者に何らかの障害があってソフトウェアが売れないように見えるのだ。
そこで、今の時期こそ勇敢なセールスエンジニアになってそのギャップを埋めるチャンスだ。あなたも、営業担当者には崇拝され、 開発者には賞賛されるソフトウェア営業の世界の救済者になれるかもしれないのだ。有能な営業担当者なら、しっかりしたセールスエンジニアがいなければ成功できいことはだれでも分かる。一方、どの開発者もセールスエンジニアなど死んでもならないと言う。でも、それは現実逃避だ。
筆者がセールスエンジニアはほかの技術者に「賞賛される」かもしれないとは書いた。しかし、「尊敬される」とは書いていないことを忘れないでいただきたい。つまり、開発者は、コンピュータサイエンスの学位を取得する間、そして就職してからも、一部には芸術作品だとも評価されるソフトウェアの開発のために何日も徹夜を重ねた結果としてその権利を得たのだ。
彼らはこれらの業績のために奴隷のように働き、克服できないと思われた問題をたいていは期限前日の真夜中から早朝にかけて解決し、技術者の名誉の印を獲得してきた。
ソフトウェアの販売を手伝うことのどこが名誉なのか疑問に思うかもしれない。
売上を管理する幹部に聞けば、必ず「大変な名誉だ」という答えが返ってくるだろう。契約をまとめるのを手伝った人からも多数の賛辞が集まるだろう。しかし、名誉や賛辞はしばらく忘れてもらいたい。このような転職を考えるのにはもっと重要な理由がある。
セールスエンジニアは大もうけできるのだ。
技術者諸君、少しは筆者の話を聞いていただけるかな?
米労働統計局によると、経験豊かなエンジニアはセールエンジニアの仕事で13万ドル以上稼ぎ出せるという。確かに報酬の一部は歩合だが、基本給はソフトウェア開発者のそれとたいていあまり変わらない。それに本給以外の部分も大きい。
セールスエンジニアなら会社の車を個人で利用できるかもしれない。ポルシェではないにしても、少なくともガソリン代とメンテナンス費用は会社持ちだし、自動車ローンも支払う必要がない。
出張をいとわない必要があることも確かだが、マイレージプログラムのマイルがすぐたまる。さらに、優秀な成績を上げると休暇旅行や景品のようなインセンティブを出す企業もある。
筆者が知っているあるセールスエンジニアなどは、何年も前から United Airlines の Platinum Medallion クラブメンバーになっており、その結果、かなり前から休暇にお金を使ったことがない。さらに、彼は、売上目標を達成することにより、しゃれたリゾート地、ハワイ、その他さまざまな珍しい場所にタダで行ける「President’s Club」賞を受賞し、会社の費用で多数の素晴らしい場所を訪れている。
地域を限定したセールスエンジニアの仕事もないわけではないが、パーティションに閉じこもってコーディングに没頭するのが好きな引きこもりがちの人はここで読むのをやめてコーディング作業に戻って構わない。
まだ本稿を読まれているだろうか? ならば、収益性の高い報酬と興味深いメリットのポテンシャルに注目していただけたものと仮定したい。
たとえこれらすべてのインセンティブをそろえても、優秀なセールスエンジニアを探すのは極めて困難だ。それとなく前述したように、だれにでもなれるといったものでもなく、これを職業として選ばない理由の1つは、最も才能のある開発者は「ダークサイド」への移動を考えていないからだ。さらに、営業を「ダークサイド」だとする考え方は、採用担当者が技術者を転職させるための戦いの半分に過ぎない。
このような認識から、同僚の開発者たちに冷笑されるかもしれないのにこのような職に転職することは疑問に思うかもしれない。
まず、自分の予定がもっと自由になるので必要なときに休暇が取れる。出張が多いため、多くのセールスエンジニアは在宅勤務もできる。
次に、トレーニングを多数受けられる可能性も高い。ソフトウェアの機能やメリットに精通する必要があるほか、競争についても精通する必要がある。また、自分の業界の技術トレンドをしっかり把握しておく必要もある。これらすべてに対応するには多くの書籍を読み、学習を継続する必要がある。
3つ目に、話術も大きく向上する。まあ、これが多くの開発者にとって「大成」するための条件でないことは分かるが、自分が夢中になっている話題について話すことになるのだ。
以前、筆者の部下に顧客の前に絶対に出さないで欲しいという開発者がいた。だが、2人のセールスエンジニアが病欠で、重要な見込み客が質問の電話をかけてきた。そこで、(彼には残念なことながら)この嫌がる開発者を電話に出した。ところが彼は、契約獲得に大いに役立ったのだ。気取らずに豊富な知識を披露したため、やはり相当なレベルの技術者だった顧客の心を強く掴んだのだ。
大方の予想とは裏腹に、人々に気に入られる人気者である必要はない。最終的には相手も技術者が話の中心になってくることになり、同じような会話をすることになる。十分な技術的知識を持たない人が横から口を出すよりも、その共通のつながりの方がソフトウェアの販売に役立つのだ。
この仕事があまりコーディング作業と関係ないことは確かで、ここが一部の開発者には耐えられない。ときたまサイドプロジェクトとして統合用のコードを書くことはできるかもしれないが、肝心な仕事のことになると、ソフトウェアを夢の商品のように見せることがあなたの使命となる。
厳しい経済状況を考えた場合、もしかすると今は転職に適さない時期なのかもしれない。しかし、もし失職してしまった場合は、ほかに失うものはほとんどないのだから、もっと真剣にこの行動を検討しても良いかもしれない。
また、セールスエンジニアリングの仕事が何らかの形でオフショアリングやアウトソーシングの対象になる可能性は低いので、このような行動は将来の仕事を保証することにもなるかもしれない。
もしこれがうまくいかなくても、新たに洗練された話術で友人を感動させられたら素晴らしいではないか。
Eric Spiegel は、Citrix などの各種仮想化プラットフォームのプランニング、管理、および監査を行うソフトウェアを販売する XTS の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)