第22回 面接に進める職務経歴書の書き方
転職活動における第一の関門は、書類選考です。どんなにスキルに自信があっても、面接での自己アピールが得意でも、書類選考を通過しない限り、あこがれの会社に入るチャンスはありません。
http://www.itmedia.co.jp/career/articles/0809/29/news099.html
今回は、転職活動の途中で職務経歴書の書き方を変え、転職に成功したITエンジニアのエピソードを紹介します。その事例を通じ、職務経歴書の内容の重要性についてお話ししたいと思います。
開発エンジニアになりたい山岸さん
山岸さん(仮名)は26歳のITエンジニア。私立大学政治経済学部を卒業後、従業員約3000人の大手システムインテグレータに入社。ネットワークの運用監視業務に携わっていました。
就職の動機は「ものづくりがしたい!」という熱い気持ち。しかしながら入社後に配属されたのは、希望とはまったく異なるネットワーク運用サービス部門だったのです。
もともと頑張り屋の山岸さん。入社してから4年間、仕事に対するモチベーションを落とさず頑張ってきた結果、クライアント企業からも高い評価を得てリーダー業務を任されるまでに成長していました。でも、やりたい仕事は4年たっても相変わらず「システム開発」。何度も上司に「開発部門へ異動したい」と訴えていたにもかかわらず、一向に希望がかなえられないため、とうとう転職を考えるようになったのです。
書類選考を通過できない!
私が山岸さんに会ったのは、実際に転職活動をスタートして1カ月ほどたったころのことでした。開発エンジニアへのキャリアチェンジを目指して転職活動を進めているが、思った以上に、書類選考を通過できないというのです。複数の企業に書類を提出したのですが、いずれも「スキル不足」という理由で、面接には進めなかったというお話でした。
さっそく、山岸さんが準備していた職務経歴書を見せてもらいました。お話から想像していたとおり、それは開発エンジニアの職務経歴書とは程遠いものでした。
入社から4年間、同じ金融機関のネットワークの運用監視業務に携わっていたということもあり、A4用紙1枚の、非常にあっさりしたものでした。実務経験からは、妥当な職務経歴書だったと思います。
しかしながら、山岸さんにいろいろとインタビューしてみたところ、職務経歴書に書かれていない下記のような経験とスキルを見いだすことができました。いずれも、開発エンジニアに必要とされるものです。
新入社員研修で、C言語のプログラミング演習を受けている
基本情報技術者の資格を有しており、プログラミング言語問題はJavaで受験している
自身がプレイするフットサルサークルのWebサイトを自作している
自社内で有志の勉強会を企画し、さまざまな勉強会資料を作成している
開発系のエンジニア志望であれば、プログラミング経験と設計書などのドキュメント作成能力が、書類選考時のポイントとなります。特に20代半ばの若手である山岸さんにとっては、実務でなくとも大きなアピールポイントになるのです。しかし山岸さんは、「職務経歴書には実務で経験したことを書くものだ」と思っていたため、上記のような項目には思いが及ばなかったのです。
このことに気付いた山岸さんは、職務経歴書を修正し、再び複数のシステムインテグレータに応募。6社中、5社の書類選考を通過し、面接のオファーをもらうことができました。
面接では持ち前のコミュニケーション能力をフルに発揮し、3社から内定を獲得。その中から第一志望であった東証一部上場の企業を選び、山岸さんは開発エンジニアへのキャリアチェンジを実現させたのでした。
研究室勤務。今後は民間企業で働きたい西井さん
西井さん(仮名)が私のところに転職相談に現れたのは、転職活動を始めてから半年以上たったある日のことでした。
35歳の西井さんは、国立大学数学科の博士課程を修了後、お世話になった教授の勧めで大学の研究室職員に。以後10年近く、国が運営する研究機関向けソフトウェアの開発に従事していました。
しかし、この研究室ではソフトウェアの開発業務が縮小傾向にあること、次の年に結婚を控えていることを考え、今後は民間企業の正社員として腰を据えて働きたいと思うようになりました。
厳しい現実
長年、高性能ソフトウェアの開発に携わってきた西井さんですが、民間企業の勤務経験はまったくありません。35歳という年齢では即戦力が求められるため、残念ながら多くの企業で、書類選考の段階で見送りとなっていました。いくつか面接に進んだ企業もあったのですが、面接官からの質問は研究室でのシステム開発以外の業務に関するものが多く、自分の技術力をうまくアピールすることができなかったそうです。その結果、採用内定には至らなかったとのことです。
西井さんに会った際、企業に提出している職務経歴書を見せてもらったのですが、それまでに経験した業務が忠実かつ詳細に記載されているものの、事務的な業務や研究論文発表会の運営など、開発業務以外の記載がほとんどでした。民間企業で働くITエンジニアが作成する職務経歴書とは、大きく異なるものだったのです。
大学の研究室と民間企業では、ソフトウェア開発における業務フローも、成果物も大きく異なります。そこで私は西井さんに、民間の企業がどのような仕事のスタイルでシステム開発を行っているのか、それまで西井さんが携わってきた業務とどのように違うのかを説明しました。
そのうえで、職務経歴書の修正を提案しました。西井さんの経験の中で、民間企業にも十分に通用する下記の業務を強くアピールするようにしてもらったのです。
C言語によるソフトウェア開発(1万ステップ以上の実装)
大手ソフトウェアベンダとの要件定義、折衝業務
リーダーとして、協力会社のメンバー4~5人の進ちょく管理
システム開発以外の業務はボリュームを減らして、極力、民間企業に勤めるITエンジニアのものに近い職務経歴書になるようアドバイスしました。
西井さんは、新しい職務経歴書で企業に応募を行いました。その結果、今度は7社中4社から面接のオファーをもらうことができたのでした。西井さんは、職務経歴書を修正しただけでこんなに結果が変わってくることにびっくりしていました。
いざ進んだ面接でも、職務経歴書に沿って開発業務経験をアピールすることができた西井さん。見事、中規模ながら業界では有名な自社パッケージ製品を持つソフトウェアベンダへの転職に成功したのです。
職務経歴書は、あなたをアピールするプレゼン資料
職務経歴書をアレンジした結果、見事に内定を勝ち取った2人のITエンジニアの事例を基に、職務経歴書の重要性についてお話ししました。
開発エンジニアへのキャリアチェンジを目指した山岸さんは、実務経験以外で得た開発スキルを職務経歴書に盛り込むことで、内定を得ることができました。大学の研究室から民間企業への転職を目指した西井さんは、民間企業で必要とされるスキルを目立たせるように職務経歴書を作成し直し、転職を成功させました。
2人に共通していえるのは、「採用側がどのような人物を求めているか?」を意識するようになったということです。
企業は、どんなスキルを持った人を採用したいと考えているのか。それを意識するか、しないかで、出来上がる職務経歴書の質はまったく違ってきます。書類選考の結果も、面接での話題も大きく変わります。
職務経歴書は、あなたがいままで積んできたキャリアを表現するものであると同時に、企業に自分をアピールするためのプレゼン資料でもあるのです。同じスキルを持っていても、職務経歴書の書き方によって転職活動の結果が大きく異なることを理解していただきたいと思います。