インド人ITエンジニアの現実
IT業界、とりわけソフトウェア業界は、昼夜を問わない長時間労働など、過酷な職場環境で知られている。インドでも、ニュース記事やブログなどでは、IT技術者たちの労働環境に対する不満が数多く取り上げられている。
http://www.voiceofindia.co.jp/content/view/1223/124/
実際に、エンジニアに襲い掛かるストレスのレベルは、相当高いと言える。ストレスを原因とする健康上のトラブルが絶えない。健康トラブルと生産性の低下の関連が注目され始め、フレックス・タイム制を採用する企業が増えてきている。
フレックス・タイム制により、エンジニアたちは自分で自分のスケジュールを管理することができるし、上司から厳しい監視されることもなく、自分のタスクに集中できるようになった。これで職場環境は若干改善されたが、労働時間の長さはまったく改善されていない。
一般社会では、「昼」は仕事の時間、「夜」は自分の時間という考え方が広まっている。しかし、仮にあなたが「ITエンジニア」になれば、「夜の時間が自分のために使えなくなった」という事実に気づく時間すらないであろう。昼だろうと夜だろうと、週末であろうと、祝日であろうと、生活のすべてがタスクとその締め切りに合わせて動いている。仕事を休むのは、体を壊した時、自分を評価しない上司にひと泡吹かせたい時、転職先が決まった時、の3つだけだ。このように多忙な日々を過ごすエンジニアの心理は、崩壊と仕事の達成感の間を行ったり来たりしている。
この過酷な環境の唯一の救いは、給料が良いことだけだ。インドでソフトウェアエンジニアといえば高給取りで、身の回りに贅沢品を並べられる職業と認識されている。給料の良さが、インドの若者の多くをIT業界に惹きつけていることは間違いない。多くの若者が、よりよい給料を求めてIT業界への転職を狙っている。しかし、若者は現実をよく分かっていないと言えるだろう。運良くIT業界に転職できたとしても、稼いだ金で人生を楽しむ時間がないという現実が待っている。お金を思慮深く使うこともできなくなってしまう。
このような環境の中にあって、ITエンジニアたちにとってユーモアのセンスやジョークは不可欠だ。職場でのちょっとしたユーモアは、張り詰めた空気の職場では、大きな価値がある。また、分かち合い、思いやりの精神も、ユーモアのセンスと同じ位重要だ。
エンジニア特有の傾向として、大量のメールを同僚に送りつけることが挙げられる。その内容は、ネット上で読んだ面白い記事、自分の感情をグラフで表したパワーポイントのプレゼン、やる気が出る言葉、ビデオクリップ、ジョークなどだ。エンジニアにとって、これは自分の内面をフレッシュに保ち、単調な仕事にスパイスを加える賢い方法である。
では、エンジニアの日常の話題は何か? 彼らの会話に耳を傾けると、新しいソフトウェアの話題ばかりだ。彼らにとって世界とは、IT業界のことを意味しているようだ。ソフト以外にも、彼らは新しいデジタル機器に尋常ならざる関心を持っている。最新の携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップPCなど、話題は尽きない。
エンジニアのプライベートは? 公共の場所で、女性たちが「IT業界の男たちはつまらない」と言っているのを耳にしたことがあるが、その評価は正しいか?
ITエンジニアに関して、まことしやかに囁かれている伝説の一つに「エンジニアは性欲がない」というものがある。強度なストレスに常に晒されているから、というのがその根拠らしい。常にストレスに晒されていることは事実だが、それが本当に性欲にまで影響しているかは、まだ明らかになっていない。ストレスにより、妊娠しづらくなっている女性もいるようだ。
仕事を何よりも優先し、その他のものは見過ごしがちなエンジニア・ライフだが、彼らは今日も懸命に働いている。高額な給料も、自分の生活を犠牲にしている埋め合わせと言えよう。
これこそが、ITエンジニアの生き方なのだ。