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「一番デキる人」に安住しない――ルー語変換・冨田尚樹さんの“学び力”

「学ぶのが好きなんですよ」。冨田さんが何度も口をついたこのフレーズを入力し、「この文章をトゥギャザー!」という変換ボタンをクリックする。すると「スタディーするのがラブなんですよ」と出てきた。おなじみの「ルー語変換」をたった5時間で開発した冨田尚樹さんの原動力は、この言葉に凝縮されている。

2008年01月30日 14時30分 更新

http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0801/25/news081.html

 「ひとりで作るネットサービス」第21回は、テレビや雑誌でもおなじみの「ルー語変換」を作った冨田尚樹さん(29)にお話を聞いた。ふとした思いつきから作ったサービスがさまざまなメディアで取り上げられ、自らもテレビに登場するまでに至るまでには、どういった工夫があったのだろうか。

初めは恐る恐る、知れば知るほどハマッた

 「気が付いたらまわりで自分が一番デキる人になっていたんです。辞めなくちゃな、と思いました」。北海道から東京へ出てきて1年たった、24歳のころだった。自分はエンジニアになりたい、もっとすごい人がいるところで勉強したい──そう強く願った冨田さんは、次なるステージを目指して転職を決意する。

 時は23歳までいた北海道時代にさかのぼる。冨田さんは最初からエンジニアを目指していたわけではない。高校のときにバイトしてソニーの「VAIO PCG-505」を購入したのは、DTM(デスクトップミュージック)に興味があったからだ。かといって音楽に本格的に入れ込んでいたわけでもない。インターネットも始めてみたが、なんとなくWebサイトを見たりメールをしたり、といった使い方しかしていなかった。

 「北海道はコールセンター需要が大きかったんです。デスクワークの中ではわりと時給もいいんですよ」。当時職を探していた冨田さんは、ある携帯電話通信事業社のコールセンターで働くことにした。担当は技術サポート。顧客からの「データカードがつながらないのですが……」といった質問に答えていく仕事だ。

 最初はまったく技術の専門知識がなかった冨田さん。顧客からの電話でも分からない単語が次々と出てくる。「TCP/IPって初めて聞きましたね……あとWindows以外にMacintoshっていうものがあることも、そのとき知りました」。とはいえさすがに仕事なので「分かりません」とは言えない。懸命に勉強しつつなんとか対応した。

 そのうち知らない単語やよくある対応を盛り込んだ、自分用のマニュアル作りにとりかかる。サポート業務を通じ、インターネットに興味を持ち始めていた冨田さんは、早速HTMLで作ることにした。顧客からの電話に速く答えられれば、そのぶん自分の自由時間が増えるはず──そう思って進めていくうち、技術の面白さにハマッた。動的なページではなかったが、気づくとJavaScriptも駆使し、検索のような機能を付けるまでになっていた。

 自分用に作ったマニュアルだったが、ふとしたきっかけでコールセンターのセンター長の目にとまる。「これ、すごく便利じゃないか」。この一声でほかの人も使うようになった。評判が評判を呼び、冨田さんのシステムはなんと全国のコールセンターで使われるようになる。

 「全国で使われるようになると、さすがにデータ量が膨大になります。静的なHTMLだけではどうしようもなかったので、IIS上の拡張機能ASP(Active Server Pages)を使って動的なページを生成する仕組みを作りはじめました」。ASPは初めてだった。恐る恐るプログラムを組んで動かしてみると、自分の思い描いたように画面が出来上がっていく。冨田さんにとって、初めての本格的なプログラミング経験だった。

 そこから冨田さんがどっぷり技術にのめり込んでいくのに時間はかからなかった。「今思えばAjax的な工夫もしていました。使いやすいように最初にデータを大量に読み込んで、JavaScriptで表示、非表示をコントロールしていったり、といったこともしていましたね」

 ただ技術を知れば知るほど、まだまだ勉強することが山とあることを思い知る。ASPはIISで動かせるが、時代はApacheに追い風だったし、ほかのプログラミング言語も覚えてみたかった。そのときちょっと触ってみたPHPの魅力にとりつかれた。もっと知りたい……思いを募らせた冨田さんは転職を考え始める。しかし北海道でエンジニアの求人は少なかった。「よし、東京に行こう」。一念発起し、東京に旅立つ。23歳のときだった。

もっとすごいことがしたくて、さらに転職

 当てがなかったわけではなかった。北海道でお世話になった人が東京にいる。その人を訪ねた。「ちょうどいい仕事があるよ。履歴書の管理をしたくてね。そのシステムを作ってくれないか」。仕事は思いのほかすぐ見つかった。東京でエンジニアとして仕事ができる……ホッとひと安心したものの、日がたつにつれ何かが違うと思い始める。求められる技術のレベルが、自分が目指すレベルには及ばなかったからだ。

改めて自分の人生を振り返るのもいいですね」と、笑顔を見せる 「ここでも、まわりで自分が一番詳しくなっていた。もっと学びたい。すごいことをしたい」。北海道の会社を辞めたときと同じ思いがよぎり、冨田さんは仕事を辞める。このころの冨田さんはPHPでプログラムを組んでいた。勉強を重ねるうち、自分でもライブラリを作るぐらいには詳しくなっていた。ただPHPのライブラリがあるPEAR (PHP Extension and Application Repository)は、あまり盛り上がっていないように感じていた。なんとなくPerlの方が盛り上がっているのではないか──Perlで作成されたソフトウェアのアーカイブ、 CPAN (Comprehensive Perl Archive Network)などをのぞいてはそう感じていた。漠然とPerlがやりたいと考えているようになった。

 「Perlコミュニティには、なにかあこがれがありました。(Plaggerの開発者である)miyagawaさんもいましたし……」。Perlを勉強しはじめてから、よくライブラリを使っていたが、「こういうライブラリが欲しいかな」と思って探してみるとmiyagawaさんが作ったものばかりだった。「この人は僕の先を行っている」。痛烈にそう思った。彼のコードを見てさらにその思いを強く抱く。「もう、なんというか、技術ではなくて、設計の美しさというか……センスですね。とにかくどう追いついていいか分からないぐらいです」

 仕事を辞めた冨田さんは、ライブドアやはてなといった、Perlのすごいエンジニアがいる企業に転職しようかとも考えた。「ただ、まだ自分の実力では迷惑をかけてしまう。そう思い直しました。今までPHPをずっとやっていたし、なによりLinux自体をよく分かっていませんでしたから……」

 結局行きついたのは、知り合いが参謀役を務めるWeb制作会社。自分より優れたエンジニアも周りにたくさんいた。ここでなら思いっきり勉強ができる。冨田さんはそう思った。現在も勤めているその企業で冨田さんは今、携帯向けサービスの研究開発を手がけている。「携帯は興味深いですね。PCとはユーザーが違いますし。同じ日本人なのにこうも知らない世界があるのか、と新鮮です。『これゎ無料ですか?』ってメールが来たり、毎日驚きの連続ですね」

         

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