好機逃すな 30代女性の転職、リスクと成功例
30代半ばを境に、就職氷河期の悲哀を味わった。
仕事について立ち止まるのも30代かもしれない。
結婚に出産、子育て。仕事だけじゃないから悩ましい。
http://www.asahi.com/job/special/TKY200710230363.html
(AERA編集部・大波綾)
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都内の有名私大を卒業し、1998年、メーカーに就職した神奈川県在住のM子さん(31)は、90年代半ばから約10年続いた就職氷河期の悲哀をかみしめた一人かもしれない。
夢は20代で結婚退職すること。厳しい就職戦線の中でも一般職を選んだ。ところが入社3年目で当てが外れた。金融破綻の影響で会社が外資に買収されたのだ。
「一般職はいらない。総合職になるか、辞めるか。どっち?」
人事担当者に選択を迫られた。でも、バリバリ働くのは嫌。27歳で退職し、地元で金融会社の派遣社員になった。
いま30歳を過ぎて気づいた。
「同年代の女性の正社員と比べて、私ってけっこう仕事をこなせる。いまさらながら、働くことが嫌いじゃないかもって思い始めて」
先月、少し年上の女性総合職が早めの産休をとった。でも会社は人を増やさない。しわ寄せはM子さんにきた。正社員は恵まれているとあらためて思った。
結婚とは当分縁がなさそうだ。そう悟った最近、ようやく本気で正社員の道を探り始めた。
学生の就職活動から転職、再就職など数多くの女性の就職にアドバイスをしてきた「ハナマルキャリアコンサルタント」の上田晶美さんはそんなM子さんのような女性にこそエールを送る。
「新卒が売り手市場ならば、ビジネス経験がある派遣や、転職希望者にとっても売り手市場。氷河期入社組にもチャンスです」
そして、こう続ける。
「もし30代で独身だったら、この好機に生涯独身でいるキャリア設計もしておいたほうがいい」
厚生労働省によると、新たな仕事に就く人のうち、直前の1年間、就業経験がある「転職入職者」が働く人全体に占める割合の「転職入職率」は、2005年で11.0%(前年10.1%)と増加。06年でも10.4%と、
「ここ3年間は転職入職率も高水準を維持している。転職者の雇用状況も好調」(厚労省)
という。では、どうしたら好機を味方につけられるのだろうか。転職をケース別にみてみよう。
【ケース1】
●目指せ正社員!脱ハケン
「職場をコロコロ変えられ、いつでもクビを切られる。ずっと派遣社員のままでいるのはキャリアとしてリスクがある選択です」
と上田さん。特に、いま独身ならできるだけ正社員を目指してほしいと力説する。できれば20代で、30代では何としても脱ハケン。30歳でぱったり求人が減る。
「『派遣しか……』と弱気の虫になりがちですが、派遣も立派なキャリア。新卒と違ってビジネスコミュニケーションのスキルを重ねている。いろいろな会社を渡り歩く中で働く環境を見る目も肥えているはずです。絶対にマイナスにとらえないで」(上田さん)
インターネットの転職サイトに登録するのに加え、活用したいのは派遣先での人脈。派遣先からの紹介例はけっこうあるという。
派遣社員からのスタートではなかったが、過去の人脈を生かして転職し、社長になった人がいる。
ドイツの高級システムキッチンブランド「ジーマティック」の総輸入元の子会社「ティ・スタイルデザイン」社長・上野貴子さん(36)は女子美術大学でインテリアデザインを学んだ後、ジーマティックの総輸入元に入社した。ところが体調を崩し、4年で退職。少し休んだ後、イベント派遣の会社に4年勤め、6年前にマンションなど不動産のモデルルームに人を派遣する会社に管理職として転職した。
ちょうど高級マンションブームで、キッチンも高級志向に。ジーマティックのキッチンを取り入れるマンションもあった。そんなとき、交流を続けていた最初の就職先から声がかかった。ジーマティックのシステムキッチンで、オプション販売の部門を独立させようという時期。その社長になってほしいという話だった。
少し迷ったが、これも縁と06年4月、子会社の社長に就いた。「アンテナを張っていたらきっかけがつかめた。転職には昔の人間関係も頼りになると思いました」
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・できれば20代で、30代では絶対脱ハケン
・ビジネスコミュニケーションスキルを生かせ
・派遣先で得た人脈をフル活用せよ
【ケース2】
●氷河期時代の不本意な会社から転職
企業向けコンサルティング会社「ライトワークス」の井上将司さんはこう問いかける。
「毎日約8時間。どうせ仕事をするなら、自分のキャリアを充実したものにしましょう」
就職氷河期時代に入社した会社で、仕事のやりがいや待遇に不満があっても、「せっかく入ったから……」と転職に踏み切れない人も多い。でも人生は長い。不本意だった就職活動の結果をいつまでも引きずるより、ここで転職する選択も。前述のように、景気が回復基調のいまは好機だ。上田さんも言う。
「転職した時点で必ずしも給料が上がらなくても、この先の伸びしろを考えて働きがいをみつけてほしい。社会人の経験で、学生時代に描いていた職業観より視野が広がっているはずです」
大切なのは、本来やりたかったことを見直すこと。加えて、
「興味以外に自分の能力や価値観を軸に考える必要があります。理想だけ語っても仕方がありません」(井上さん)
青い鳥症候群に陥らないためにも、身近にいる人だけでなく、転職サイトなどを活用して自分に合うキャリアコンサルタントを見つけ、客観的なアドバイスを受けることも大切だ。
と、ここまではおもに30代の話。もしあなたが20代、しかも入社3年以内だったらこれまでのケースよりは有利かもしれない。
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・転職の好機を逃すな
・本来やりたかったことを見直そう
・いいキャリアコンサルタントを探せ
【ケース3】
●新卒しのぐ人気? 第二新卒
2、3年の仕事経験がある「第二新卒」と呼ばれる人たちの武器は、若さもあり、多少なりのビジネス経験があること。「すぐ会社を辞める」ことを後ろ向きに考えず、新卒と同じように売り手市場の波に乗ってみる策はある。
一般の転職者と違い、大学を卒業してから数年しかたっていないことが強みだという上田さん。
「母校の就職課に相談するという手があります。企業が広く公募せずにピンポイントで求人を出すことがあり、第二新卒にとっても就職課で掘り出し物が見つかるかもしれません」
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・ビジネス経験と若さを武器に売り手市場の波に乗れ
・頼りになるのは出身大学の就職課
【ケース4】
●いまの会社でキャリアアップ
一方で、転職の年齢制限を35歳に設定する企業も多く、30代は後半戦になるほど転職がリスキーになる。
「30代は外にばかり目を向けず、いまの会社で地位を築くことを考える時期かもしれません。子どもがいて仕事一辺倒になれないかもしれませんが、女性も会社のヒエラルキーの一員。続けるなら、管理職を目指した方が給料を考えても得です」(上田さん)
管理職になるには、マネジメント力が必要。セミナーなどに参加するのもその一歩になりそうだ。
家族が寝たきりになる、会社が合併する……。人生には仕事でもプライベートでも予期せぬことが起こる。
法政大学経営学部・ビジネススクール准教授・田路則子さん(43)は人生の紆余曲折をバネにし、研究者の道にたどり着いた。
神戸大学から88年、政府系金融機関へ。いわゆる均等法世代だ。だが、法律の範囲で決められた仕事をこなす業務が向いていないと感じて2年で辞めた。すぐに建設業に転職し、希望の営業職に。その間、28歳で結婚し、29歳で出産。中小企業診断士の資格も取った。
育休を経て職場復帰したが、子育てのために事務職に異動したのを「忸怩たる思いで、頭に霧がかかった状態だった」と振り返る。
大学院に行こうと思いたち、一橋大学大学院に。修士課程を終え、コンサルタント業を始めた。
試行錯誤で始めたコンサル業だったが、そのときの仕事がきっかけで早稲田大学のビジネススクールから講義の依頼が舞い込んだ。地方の私大の助手のポストも見つかった。それが研究者の道を本気で目指そうと思ったきっかけだ。
正規の大学教職員のポストを手に入れたとき、価値観の違いから、思い切って離婚。自分でも頑張ったと思うのは、その直後に、背水の陣で、母校の神戸大学大学院で博士号を取ったこと。
明星大学を経て、06年4月から現職に就いた。
田路さんは実感している。
「つながっていないように見えて、建設業時代の経験もコンサル業も全部いまのキャリアにつながっている。これまでやってきたことは無駄にはなってないです。学生には実学を教え、ビジネスプラン・コンテストに出場させています」
大事なのは節目節目、というのは井上さんだ。
「無意識のうちに自分が大切にしているものが必ずあります。それは何か。まずは自分を棚卸ししてみるのが、キャリアを築く第一歩かもしれません」
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・30代以上の転職はリスキーと心得よ
・どうせなら管理職目指して給料アップ
・マネジメント力を身につけよ