転職パーティー
著者: リクルートエージェント プリンター用 記事を転送
▼2007年10月16日 16:00 付の記事
□国内internet.com発の記事
http://japan.internet.com/column/career/20071016/1.html
欧米社会ではよくパーティーが開かれる。ハロウィーンのような定番パーティーはもちろん、引越したといってはパーティー、フラれたといってはパーティー、フットボールチームが勝ったといってはパーティー、etc…。
もっとも、英語では大学生のバカ騒ぎもパーティーなら、山登り等の一団もパーティー、政治団体もパーティーなのだから、人が集まればそれでパーティーということなのかもしれないが。
Tさん(27歳)とSさん(29歳)は連れだって我々のサービスに登録をした(Tさんから我々に送られてきた最初のメールは、CCでSさんにも送られていた)。彼女たちは共に帰国子女で、海外にいた時、カレッジの寮パーティーで知り合ったのだそうだ。
TさんのキャリアはPR、Sさんは人事という違いはあったが、彼女たちは共に「英語がいかせる職場」を希望していた。親友同士はデコボココンビのようなまったく違うタイプの二人ではあるが、TさんとSさんは明るい性格、早口で帰国子女らしいジェスチャーを交えたしゃべり方、良い意味で少し派手な見た目の印象、すべてにおいてとてもよく似ていた。
したがって、転職活動に入って彼女たちが同じ外資系日用品メーカーA社に興味を持ったのは自然なことだった。 A社は外資系であるにも関わらず、英語に堪能な社員が少なく、「キャリアは度外視しても、英語力のある人材を採用しなければならないかもと思っていたところに、TさんとSさんが来てくれた。必要だったPR・人事のポジションも埋まって願ってもない人材です」と、二人が入社を承諾してくれたことを喜んでいた。
ところが、入社を二週間後に控え、Tさん・Sさんはやはり揃ってA社への転職を辞退してしまった。
「決して騙そうと思ったわけではないんです」
Sさんは我々にそう弁明をした。「A社に転職するつもりで、今の会社で退職の手続きを進めていました」
一週間前、二人は揃って同じ会社に転職できることになったことを喜び、転職パーティーを開いた。そこに、現職の取引先担当者の友人の恋人で、外資系メーカーB社のゼネラルマネージャーであるV氏が来たのだ。
「A社に行くなら、うちに来てくれればいいのに」と、V氏は言った。ふたりは話を断るつもりだったが、彼は強引だった。
「転職なんて、人生のうちにそう何度もないこと。チャンスを逃しちゃいけない」
パーティーの翌日、二人はB社に招かれた。B社はA社に負けない彼女たち好みの雰囲気で、会社の規模も大きく仕事内容はよりハイグレードで、待遇もよかった。
「モラルに反するとは思ったんですが、客観的に見ればこちらのオファーを受けるしかないと思いました」
Sさんは申し訳なさそうではあったが、キッパリと言った。
A社が落胆したのは言うまでもない。
「パーティーで出会った…。そういうのはもっと早くやってほしかったなあ。でも転職を記念したパーティーなんですよね、ハハハ、じゃあどうにもならないか…」
欧米で社会人が開くパーティーは、人脈を広げるために重要だと聞く。パーティーで知り合った人に引き抜かれるなんて話は頻繁にあるのだろうが、それが転職パーティーだったというのは皮肉としかいいようがない。
この一件の後、また別の転職者、日本人とカナダ人のハーフであるGさん(26歳)が内定を決め「ありがとうございました。本当に嬉しいです。来週、友達をたくさん呼んで『転職きまったゼ、パーティー』を開くんですよ」と言ってきた時、我々は思わず身を固くした。
「そ、そうですか。楽しんで来て下さい。あの、でも…」
「なんですか?」
「いや、なんでもありません。楽しんできて下さい」
仮にそこでもっと条件の良い話があれば、Gさんにとってはハッピーなことだから、我々が口を出す筋合いではない。だが、念のため、我々は内定先の会社に「本人はとても喜んでいます。ただ、まだ周囲への連絡とか、いろいろあるようなので不確実なところも…」と、何かをほのめかすような連絡を入れておいた。
パーティーの翌日、電話が鳴った。
「あのぉ…」申し訳なさそうなGさんの声。またかと思った我々にGさんは続けた。
「パーティーでエージェントさんのことを話したら、紹介してほしいってみんなに言われて、20人近くに連絡先を教えちゃったんですけど、ご迷惑になりませんか?」
もちろん我々は、「とんでもない、ありがたいことです」と話をし、ホッと胸をなでおろしたのだった。
日本の会社では送別会・歓迎会は頻繁にあるが、自分から人を招いて転職パーティーを開くというのはそれほど耳にしない。しかし、ビジネスパーソンにとって社外の人脈は重要性を増している。転職をきっかけにパーティーを企画するというのは、なかなか面白い趣向だと思うのだが、いかがだろうか。