第23回「同業他社への転職に伴うトラブルの増加」
雇用の流動化が進み、転職市場が大きく変化しています。長期雇用システムが変容し、労働者にとって定年までひとつの会社で働くことが必ずしも利益と言えない状況となっています。また、職業紹介事業など転職を支援する社会的インフラも充実しつつあります。このような中で、同業他社への転職が増加し、これに伴って退職金の不支給・減額や営業秘密の取り扱いなどに関する紛争が生じています。
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/jinji/rensai/maruo2.cfm?i=20070927ja000ja
長期雇用システムは変容してしまった
従来の労働市場において転職が少なかったと言えば、これは不正確となります。大・中堅企業と中小企業とでは雇用の在り方は大きく異なっていました。中小企業では転職は盛んであり、転職者を受け入れる土壌がありました(外部労働市場)。これに対し、大・中堅企業では新卒一括採用者を社内で育成して、その中から役員や幹部社員を選抜していくことが一般的でした(内部労働市場)。
1990年代前半のバブル崩壊後、金融機関出身者などの優秀な人材が労働市場に多数流出しました。また、2000年前後の企業のリストラにより、大・中堅企業でも終身雇用が事実上揺らぎました。この時期に、企業規模を問わず、雇用の流動化の基盤が出来上がりました。また、新興企業が急増したこと、経営者像が変化したことも、長期雇用システムを変容させるのに影響を及ぼしました。
そして現在、企業が新規学卒者の人材採用数を急激に増やしたことにより、採用の実態は「売り手市場」とも称されています。このことで転職市場にも新しい動きが生じています。企業内で手薄となっていた中間管理職層の補充が急務となり、中途採用が盛んとなっています。業界により異なりますが、大・中堅企業でも転職を受け入れる企業が増えつつあります。
これらの変化を労働者から見たとき、転職は消極的なものから積極的なものへと転換しました。すなわち、リストラ等の理由でやむを得ず転職するのではなく、自らのチャレンジのために転職する労働者が増加しています。もっとも、このチャレンジが長期的視野で見たときに労働者にとって合理的なものであるかは、個々の事例によるでしょう。しかし、「合理的」であるか否か自体も、判断基準が大きく変わっているのかもしれません。 少なくとも、労働者の選択の機会が増したことは、企業とその従業員との「労使共同体」という意識を変えることに向かいます。その結果として、長期雇用システムを支える労使の主観面が大きく変動し、後戻りできない状況となっています。