【新聞が書かない】中学教師がカジノディーラーに!
渡辺賢一 【新聞が書かない中国経済】 連載第18回
マカオ発展の裏で人材の偏りが深刻化
++++++++++++++++++
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=0508&f=column_0508_003.shtml
約半年ぶりに訪れたマカオ(澳門)は、大きく様変わりしていた。かつて、マカオカジノの「総本山」として君臨したリスボアホテルのすぐ隣には、はるかに巨大で、かつ超近代的なラスベガス資本のリゾート施設「ウィンリゾート」が誕生。リスボアを運営する地元資本、STDMも負けじと、リスボアの向かいに巨大な「ニュー・リスボア(=写真)」を建設し、すでにその一部がオープンしている。今やマカオのカジノ売上高はラスベガスを抜き、世界一のカジノ都市となったが、その成長は止まることがないようである。しかし、続々と建設されるカジノやリゾート施設、ホテルがいずれ供給過剰となり、共倒れになる危険はないのだろうか? 天井知らずの高騰が続く中国株式市場と同じように、マカオの投資の過熱ぶりにも一抹の不安を禁じえない。
不安といえば、もうひとつ嫌な話を聞いた。相次ぐ新しいカジノの誕生でディーラーの数が不足し、高給をエサにした引き抜き合戦や、若者のディーラーへの転職が活発化しているという。今や、マカオのカジノディーラーの月給は1万8000-2万パタカ(約28万-31万円)。これは香港の大卒初任給(約1万香港ドル=約15.5万円)よりはるかに高く、香港よりも賃金・物価水準が低いマカオにおいては破格の高給だ。
マカオに開設されたディーラー養成学校は大盛況。なかには、安定した中学教師の職を捨ててまで、カジノのディーラーに転職した女性もいるという。それでいいのか!と思わず突っ込みたくなるけれど、「仕事の中身よりも収入が大事」という香港人・マカオ人の価値観は、何も今に始まった話ではない。日本人なら、たとえ高給でも潰(つぶ)しのきかないディーラーになるより、安定して社会的信用も高い教職を続けることを選ぶ人が多いはずだが、たとえ100円でも給与が高ければ、仕事の中身はどうあれ明日にでも転職するのが、彼らの一般的な考え方なのである。
++++++++++++++++++
中国本土の若者でもやはり、「収入重視」という刹那的な職業選択に走る者も少なくないようだ。ある中国人起業家に聞いたところ、最近、中国の大学では、金融コースに入学希望者が殺到しているのだという。背景には昨今の「株式ブーム」がある。株式運用によって巨額のサラリーを手にするファンドマネジャーが新たな人気職種として脚光を浴び、「自分もファンドマネジャーになって大金を手にしたい」という若者が増えているらしい。かつては、ITやバイオなど技術者系が花形だったが、時代とともに人気は移り変わっているようだ。
職業観の偏りは、社会や経済のバランスを損ないかねない。巨大な中国本土においては、その影響も限定的だろうが、人口わずか40万人のマカオはどうか? カジノ以外の産業が人材不足で成長力や競争力を失い、ただでさえGDPの3割を占めるカジノ産業にますます依存せざるを得ない経済が出来上がる。そんな状況下で、もし「カジノバブル」が崩壊でもしたら……。中学教師ですらディーラーになるぐらいだから、大部分のマカオ市民は、その恐ろしさに気付かないまま、好景気に浮かれているのかもしれない。
■連載コラム 渡辺賢一の【新聞が書かない中国経済】
【執筆者】
渡辺 賢一(わたなべ けんいち)
経済ジャーナリスト。香港の日本語新聞『香港ポスト』編集長を経て独立。中国・香港の経済・産業情報を専門とする。主な著書に『大事なお金は香港で活かせ』(同友館)、『業界別 これから上がる!中国株厳選68銘柄』(双葉社)、『FX外国為替保証金取引「超」入門』(技術評論社)、『人民元の教科書』(新紀元社)、『イー・トレード証券ではじめる かんたん ネット株取引~本気(マジ)で得する活用術』(技術評論社)、『楽天証券ではじめる ケータイ電話で売る・買うスピード株取引』(技術評論社)、『イー・トレード証券で極める 実践ネット株取引』(技術評論社)、共著による『世界株式地図』(新紀元社)など。最新刊は3月発売の『こんなに儲かるはじめる中国株・投信―中国株・投信をはじめる!!』(ローカス)。『フジサンケイ ビジネスアイ』で中国経済コラムを連載中(毎週火曜日)。
■関連ニュース
・マカオのカジノ収入21%増、大陸客54%増(2007/04/05)
■関連トピックス [経済 > コラム > 渡辺賢一] [地域 > その他 > マカオ]