転職・起業時に自らルール、信頼得る
転職や起業をする時、それまでに培ってきた人間関係を新しい仕事に上手につなげられるかは、その後の仕事の成否を左右する。前の職場との“ケンカ別れ”や、なりふり構わない人脈活用はもってのほか。実利優先のビジネスの世界とはいっても、やはり血の通った人間関係作りが大切だ。(月野美帆子)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20070517ok04.htm
オリックス日本橋支店で法人営業を担当する田中里奈さん(27)は、2年ほど前に中堅証券会社から転職してきた。証券会社時代は入社3年目で社長賞を取り、今の職場でも転職後1年ほどでMVP賞を受賞した。
「自分なりのルールを守って人脈は大切にしています」と、臼井さん(東京都渋谷区で)
生き馬の目を抜く金融業界で活躍する田中さんだが、人間関係では謙虚な姿勢を心がけている。「前の職場の仕事を奪うような営業はしないようにしている。逆に前職時代に懇意にしていた企業でも、今の職場に担当者がいれば、接触しない」と話す。
同じ業界で働き続ける上で、人のつながりを粗末にすると、結果として自分の首を絞めることになるからだ。
大手出版社の雑誌編集部で約6年間働いた経験を生かして、3年前に編集プロダクション「ステップ・ワイズ」を作った臼井美伸(みのぶ)さん(41)も「以前担当していた雑誌のライバル誌からは、仕事を受けない」など、自分なりのルールを設けた。なりふり構わない仕事をすれば、すぐに業界内で評判が広がるからだ。
例えば起業後、前の職場で担当した研究者や筆者から個人的に編集の依頼があっても、いったん古巣の担当者に“仁義を切る”そうだ。「会社の看板には頼れない今、人間として信頼されることが第一。そうでなければ仕事を任されなくなる」。節度を保った人間関係作りが功を奏し、雑誌取材の仕事のほか、最近は単行本編集の仕事が増えてきた。
一昨年に住宅機器メーカーから医薬品メーカーへと、全く異業種に転職したA子さん(35)の場合は、仕事内容が同じ管理部門だったため「転職当初から、前職時代に培った人脈や経験をかなり期待されていた」と言う。退職時のあいさつ状には「業種は違っても、同じ分野で仕事を続けます」と、それとなくアピールした。
だが前の職場に対しては、人脈・経験をひっさげて新天地へ――という態度は一切見せなかった。「育ててもらったことへの謝意をひたすら示した。今の職場が嫌で辞めるのではない、と伝えることは非常に重要」と話す。古巣の上司や同僚とは、今も定期的に情報交換する関係を保っているという。
転職紹介のリクルートエージェント(東京都千代田区)でキャリアアドバイザーを務める細井智彦さんは「転職者の多くはそれまでの経験の延長として転職するはずで、全くの異分野でゼロからのスタートという人は少ない。その際に、人間関係を大切にしない人は、その後の仕事にも影響するでしょう」と話す。「特に女性は顔を覚えられ、印象に残りやすい。ビジネスの世界で個人ブランドを磨いていくと考えれば、人脈活用のルールは謙虚に、厳格に」とアドバイスしている。
女性転職経験者男性より12ポイント高
21世紀職業財団(東京)が2005年、働く男女約1万1000人(男女ほぼ同数)を対象に行った調査によると、女性の転職経験者の割合は男性よりも12ポイントも高い。以前の会社を退職した理由では「結婚」(30%)が最も多いが、次いで「仕事内容や職場が自分に合わなかった」(25%)が多かった。
起業・転職の際の人脈活用のポイント
(細井さんの話から)
〈1〉社内規定に沿って円満退社する
〈2〉日ごろから会社の肩書を抜きにした付き合いのできる、個人的な人間関係を多業種の人と築いておく
〈3〉新しい職場で、前の職場のやり方や人間関係に過度にこだわらない
(2007年5月17日 読売新聞)
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